[子育て]少し上の世代の女性を見て、女の子たちは生き方を考えていく

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ハフポストのこの記事を読んで、久々にはっとした。”「社会と男性を信用していない」から少子化が進む”。いやまさにその通り。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/11/work-or-child-rearing_n_12910186.html

ごく個人的な体感で話をしてみる。還暦もとうに過ぎた私の母は専業主婦だった。私の同級生の母親も、大半が専業主婦だったと思う。それが当たり前で、小学校の「将来の夢」欄に「お母さん」と書く子も多かった。

母は結婚前に仕事を持っていた。大好きな仕事だったけれど、当時は結婚したら辞めるものだと言われて辞めた。後悔しているから、あなたは働き続けるべきよと小さなころの私に言った。「お金がないから離婚できないっていう友達がお母さんにはいっぱいいるの。仕事があれば自由に生きられる。」お金は大切だ、と母はことあるごとに繰り返した。

父は昔ながらの田舎の九州男児だった。長男を大事にし、娘はあまり良い大学などに行ってしまうと嫁の貰い手がなくなる、家の金は俺が稼いでいるのだから子どもは文句を言うな、という思考のある人だった。悪気なく、それが当たり前だと考えていた人だった。

母の言葉に従い、父の言葉に反発した私は、大学進学を機に家を離れ、そのまま東京で就職した。当時はまだ事務職と総合職という区分がある会社もそこそこあった。私は総合職しかないIT会社に入ったけれど、入社当時、同期の女の子たちは「一生働いていくつもり」派と「いずれは結婚して主婦になりたい」派が半々という感じだった。

入社当時、私たちの身近なロールモデルは数年~10歳上くらいの女性の先輩たちだった。年上の先輩たちは未婚か、もしくは結婚していてもDINKSで、バリバリ仕事をこなしている女性が多かった。男性と対等に渡り合い、夜遅くまで飲み会に参加し、ブランドものに身を包んで出社する。「子どもなんか好きじゃないし面倒だし、自分の人生を楽しめなくなるじゃない」と明言する先輩もいた。

元より主婦希望の女の子たちは「尊敬はするけど、私はああはなりたくない」と言った。私も含め、「一生働いていくつもり」派も、最初こそ喜んで彼女らの後ろをついて回ったが、年を経るにつれて立ち止まるようになる。「本当に子どもを産まない人生でいいんだっけ?」と。

同じように仕事をしていた仲間が結婚し退職をして、子どもを産んで、「優しい旦那さんと可愛い子どもに囲まれて幸せ」な様子を見るにつけ、気持ちは揺れるようになる。バリキャリの先輩たちが、週末自分の好きな習い事にデートにと楽しんでいるのを見ても、「それで本当に幸せなのだろうか」と思うようになってくる。ちらほらと「子どもを産むにはタイムリミットがある」「不妊症が増えている」という情報がメディアに出始めたころだ。そんな情報も焦りに火をつける。

決断するには今しかないのだ、あとから子どもが欲しかったと嘆いても間に合わないかもしれないのだ、と、私は子どもが本当に欲しいのかどうかもよくわからないまま、結婚し、妊娠した。とはいえ仕事は捨てたくない。必然的に共働きになる。

共働きは想像していた以上にしんどかった。当時所属していた部署で私は、新卒入社で初めて時短勤務を始めた社員だった。上長も扱い方に慣れていなかった。回りの同僚もどう仕事量を調整すべきか迷っていた。私自身も初めてのことで、短い勤務時間の中でどうやって仕事の成果を出していくのか、毎日もがいていた。もう上の世代をロールモデルにはできない。暗中模索な毎日だった。

結局出産前と同じような成果を出そうとするあまり、出産前と同じような時間が必要になってしまい、延長保育を繰り返し、毎日記憶が飛ぶくらい忙しくしていた。実家は遠方で、頼れるものは旦那しかいない。しかし同年代の旦那の母は絵に描いたような「世話焼きの専業主婦(義父は一度座ったらほぼそこから立つことはない)」、彼の職場は上の世代のオジサンばかりで、彼の中に「働く母」の具体的なモデルがイメージできていなかった。結果、彼は悪気なく、育児も家事も「妻である私が主体になってやってくれるもの」と思いこんでいた。

当時、私は彼との関係に悩み、多くの本や雑誌を読み漁った。当時の論調は以下のようなものがほとんどだった。「彼に家事を手伝ってもらうには、彼をその気にさせるよう手を尽くしましょう。ちょっとしたことを褒めちぎり、彼が気分よく家事育児に参加できるよう努力しましょう」。私はいつも混乱した。どうして互いに仕事をしているのに、私はこんなに仕事に育児に家事にと目を回しているのに、この上旦那の機嫌を取りながら「どうか家事育児を手伝ってください」とお願いしなくちゃならないのだろう。どうして当たり前のように、私が家事育児の第一責任者になっているんだろう。

行き詰っていた私は、よく大学や会社の、まだ未婚の後輩たちに愚痴を聞いてもらっていた。保育園は入りにくい、病児保育の制度は不十分、会社でのキャリア構築は不透明で、旦那は家のことをやらないし、やらないことを周りに愚痴っても「男ってそんなものよ、あなたがうまく操らなくちゃ」と言われる始末で、とにかく疲れている、と。彼女たちは概ね神妙な顔で私の話を聞いていた。その意味を当時の私はあまり深く考えていなかった。

さらに数年が経ち、愚痴を聞いてくれた後輩たちが結婚をする時期になった。私から見ると、自分より下の世代はもっと現実的で、冷静だ。結婚したからといってすぐに仕事を辞めることも少ない。すぐに子どもをもうける人も少ない。男性の方も、育児に協力するのが当たり前ととらえている風だ。

旦那さんも優しそうだし、まだ子どもは考えていないの?と、結婚して数年がたった気の置けない後輩に聞いてみたことがある。彼女は「とても悩んでいる」と前置きした上で、言った。「旦那も、旦那の両親も、早く子どもが欲しいと言っている。でも私はまだ積極的にそんな気になれない。光さん(私のこと)がすごく苦しんでいたのを知っているから。仕事と家事育児を前向きに両立できる自信がない」

はっとした。私にとって少し上の先輩たちが人生のロールモデルだったように、彼女たちにとっては私たちがモデルだったのだ。「共働きで子どもを産んだ」私が、まるで幸せそうには見えなかったのだろう。私の愚痴は彼女の「社会と男性への不信」を思い切り高めていたのだ。

女の子は身近な少し上の世代の女性をお手本に、自分の人生を組み立てていく。メディアを見れば、「待機児童が多すぎる」「妊婦マークは狙われる」「ベビーカーは邪魔」「子どもの泣き声は公害」とうんざりするような言葉がおどっているし、「仕事も育児も両立していてとってもハッピー」という女性の記事には、「近くに元気で子どもの面倒を喜んでみてくれる親が住んでいる」とか「世帯年収が高いので必要なだけシッターさんを雇える」とか、いろいろと達成が難しそうな条件が付帯している。子どもを産みたくなるわけがない。

「子どもが産まれたら、母親は当然それまでの生き方を見直し、必要に応じて変えるべきだ」という考え方を、一度全て捨ててみることはできないだろうか。理想はサザエさん一家なんて言われたら、女性はますます結婚も出産も嫌になる。女に子どもを産めと言うのなら、政府も男性も「妻になれば、母親になれば、当然女の方が変わって、喜んで自分と子どもの世話をしてくれるもの」という都合の良い思い込みと甘えを、一滴残らず早々にドブに捨てた方がいい。家事や育児にはもちろん喜びがある。でも喜びだけでは決してない。

フランスのように「結婚した、子どもは産んだ、でも生活スタイルはそう変わらない」状態を保てるのであれば、出生率は確実に上がるはず。政府が努力すべきなのは、理想の家庭モデルなんかを打ち出すことではなく(そもそも理想の家庭なんて各々違って当たり前だ)、「出産前にできていたことを、出産後も当たり前にできる」状態を整えることだと思う。個人的には、いつでも安心して利用できる保育施設の拡充と、シッター制度の普及と、あとは「余裕がない、仕事を失った、夫が逃げた」時のような緊急時の金銭的補助があれば、それだけでも上出来だ。

もし私のような子育て世代が、「大丈夫、確かに子どもを持つと、自分のためだけに使えるお金はちょっと減っちゃうけど、政府や夫も頼りになるし、生活そのものは大して変わらないわ。今まで通り幸せな人生よ」と後輩たちに言うことができれば、きっと女の子たちは子どもをもつ人生に不安を感じずに済む。「安定した職業の旦那さんの妻になって、専業主婦になる」という、その不安から「わかりやすく逃れられそう」な選択肢に、必要以上に憧れを持たずに済む。

私には娘が2人いる。彼女たちが結婚や出産について考える時、「結婚しても、子ども産んでも、そんなに生活は変わらない」世の中に近づいているといいなと思う。価値観はより多様化し、幸せの形はますます「人によって異なる」ようになっているだろう。その時に、周りの情報にいちいち揺れたり、他人を批判することで自分の安定を確かめるような大人にならないよう、「自分の幸せ」を具体的にイメージし、それに向かって努力できる人になってもらいたいと考えている。そして他の人の「幸せの形」を受け入れられる人であることも大事なことだ。

後輩たちへ、そして子どもたちへ。社会や夫への信頼が薄い中であっても、自分の幸せをつかもうと努力している姿が見せられるよう、私もまだまだ手探りで試行錯誤の最中だ。

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